飛ばない蝶は、花束の中に


「ならば、鷹野を馬鹿だと思うか?」

深雪から見ても、もどかしい自分の女を…ないがしろにして、他の女にうつつを抜かす馬鹿だと、思うか?




「……馬鹿だと…思うけど……うつつを抜かすのとは、違う気がする」


私にキスをしたのだって、決して私を好きだからしたわけじゃないし…。



「でも、ないがしろには、したと…思う」


だって、雅が嫌がるのわかってるのに、他に…私に…キスするなんて。

どうしてあんな事したのか、わからないわ。





「そうだな」


お兄ちゃんは、真っ直ぐ前を向いて車を走らせながら、あっさり頷くと、苦笑した。




「鷹野は…雅に、はっきりと妬かれたくて、当の雅をないがしろにしたんだろうな」


自覚があるのかどうかは、わかんねぇが、と。


お兄ちゃんは。





お前が来て、雅は僅かに、妬いたんだ。

対象は、俺。



俺が解るんだ、鷹野はもっと解ってたろうよ。


馬鹿な奴だ、そんな些細な事に妬いて、雅を見失いやがった、と。


そう、笑った。




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