飛ばない蝶は、花束の中に


当たり前だ、冷めるから食え、と。

携帯で時間を確認したお兄ちゃんは、もうこんな時間か、と、片眉を上げた。


何かを思案するお兄ちゃんは、綺麗だと思う。

綺麗な金髪が、店内の照明に反射して。


まぶしくは無いけれど、日本人のしなやかな髪質をうまく継いだのか、ちっともカサついていないのが解る。


もしかしたら、“タカノ”が補充する、あのパールグレーのシャンプーのおかげもあるかも知れないけど。



お風呂から上がったお兄ちゃんを、思い出す。

上半身裸でうろうろしては、雅に。
そろそろシャツ着ないと風邪引きますよ、なんて。

控えめに言われても、なかなか着ない。


私はそんなお兄ちゃんを見つめては。

ちょっとずつ、違和感を感じていたっけ。




私が、幼い恋心を抱いていたお兄ちゃんは、人間で。

当たり前なんだけど、血の通った、ごく普通の人間で。





決して、童話に出てくるような、王子様みたいな人じゃ、なかったんだ。





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