飛ばない蝶は、花束の中に



「雅、友典来たんじゃねぇか?」

「宇田川さんも一緒みたいです」



私の荷物を手に取って。
お兄ちゃんは、私を見る。


“タカノ”に髪を整えられて、お兄ちゃんのくれた青い蝶の簪を。

鏡の中の“タカノ”の顔は、真剣で。
仕事をする時の、顔。



妖艶で、淫靡。
ヘタレで、馬鹿。

呆れるくらい、雅に溺れてる。





「ん。綺麗に出来た」


浮かべた笑顔は、小さい頃に見た、荒んだ目ではなくて。


お兄ちゃんが変えたのか。
雅が変えたのか。

それとも、時間が変えたのか。



キスをした分だけ、私の意識は、唇に向いてしまう。



「ありがとう」


素直に、言える。

いいえ、と答える“タカノ”の笑顔が、とても綺麗で。

彼の精神を構築する上での、雅の大きさが、尋常ではないのだと、少し、怖くなった。




< 314 / 328 >

この作品をシェア

pagetop