飛ばない蝶は、花束の中に
「雅、友典来たんじゃねぇか?」
「宇田川さんも一緒みたいです」
私の荷物を手に取って。
お兄ちゃんは、私を見る。
“タカノ”に髪を整えられて、お兄ちゃんのくれた青い蝶の簪を。
鏡の中の“タカノ”の顔は、真剣で。
仕事をする時の、顔。
妖艶で、淫靡。
ヘタレで、馬鹿。
呆れるくらい、雅に溺れてる。
「ん。綺麗に出来た」
浮かべた笑顔は、小さい頃に見た、荒んだ目ではなくて。
お兄ちゃんが変えたのか。
雅が変えたのか。
それとも、時間が変えたのか。
キスをした分だけ、私の意識は、唇に向いてしまう。
「ありがとう」
素直に、言える。
いいえ、と答える“タカノ”の笑顔が、とても綺麗で。
彼の精神を構築する上での、雅の大きさが、尋常ではないのだと、少し、怖くなった。