飛ばない蝶は、花束の中に


「雅ちゃん雅ちゃん、大丈夫。雅ちゃんは可愛いから」


わずかにしょんぼりとした雅を、椅子に座らせて、“タカノ”は雅の髪に、櫛を通した。



「深雪ちゃんは、凱司にそっくりで…ちょっと気持ちわ…」



ちょっと!
“タカノ”!
そういう事は、私の居ないところで言いなさいよ!!


私は、じろりと睨みつける。



「うわ、その顔。マジそっくり」

「…………深雪ちゃん…」


笑顔笑顔、と。
雅は笑う。




今日。
私は、うちに帰る。

それから、ドイツに渡る。



お兄ちゃんと離れるのは、つらいし、寂しい。


だけど。
私は、妹だから。

離れていても、大丈夫。
お兄ちゃんは、私を忘れない。





「…レシピ、あとで纏めて送りますね」

「……レーズンとクルミのクロワッサンも、忘れないでよね」


ああ、あと、桃のバターケーキも。
グレープフルーツのタルトも。



あんたの作り出す、色々な“好き”の詰まったレシピは、覚えておかなくちゃ、ね。




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