飛ばない蝶は、花束の中に



「深雪さん、つつがなく、お過ごし下さいますように」



髭の彼は。
私が帰ることを喜ぶかと思ったのだけれど…。


やけに堅く寂しげに、頭を下げた。

雅が、阿呆の子みたいに触る髭は、いつも整えられていて。

毎朝、ハサミで揃えているのかと思うと、ちょっと可笑しい。




「…髭」

「……は」

「ちょっと触らせて」

「………………」



別に触らなくても良いんだけど、あんなに雅は触りたがるんだから…何か、良いことがあるかも知れない。




「…わ…私の髭の…何が…」

「さあ?触ったら分かるかも知れないわ」


髭の彼の視線は、責めるように雅に注がれる。




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