飛ばない蝶は、花束の中に


「宇田川さん…もうその髭、剃ったら?」


雅に、赤いリップカラー。

切りそろえられた濃い髪に、くるくると良く動く、目。


“タカノ”の長い指は、さながら人形遊びをするようで。

転じて、紅筆を取り上げた雅に、おとなしく唇を開く。




「意外と柔らかいのね」

「…そ…ですか?」


髭の彼は、目を逸らす。

雅には身を屈めてやるくせに、私には真っ直ぐ立ったまま。




「ありがとう、ご利益あるかも」


ほっとしたように苦笑した、髭の彼。

横から手を伸ばしたお兄ちゃんにまで髭を引っ張られ、固まった。




「…お前の髭はいつから縁起物になった」


「…………」


「最近、トリートメントするかどうか悩んでるらしいな?」


くく、っと笑って手を離したお兄ちゃんは、誰よりも大きくて。

綺麗で。
セクシーで。



私の、大好きな、ひと。





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