飛ばない蝶は、花束の中に


お兄ちゃんの運転する車。

先を行くのは、髭の彼。

黒いアウディの中には、彼の息子と、“タカノ”、そして雅。


私はお兄ちゃんと、2人きり。

いつどうやって決めたのか、自然と、そうなっていた。




「楽しかったか?」


不意に、訊かれた。



うん、お兄ちゃん。
楽しかったわ。

楽しくない事も、楽しかった。




「心残りは?」



…ある。
ある、けど…。




「なら、また来て、やればいい」



お兄ちゃんは。

運転しながらではあるけれど、左腕を伸ばして、私の頭を撫でた。




「また…来ていい?」

「勿論」


だけど、ちゃんと母親に言ってから来い、と。

あまり心配かけるな、と。



お兄ちゃんは。
みんなは。

私を空港まで、送ってくれる。

“タカノ”は、休みを調整してまで。




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