飛ばない蝶は、花束の中に


“タカノ”は少し背を屈めて、私と目を合わせる。



「ちょっ…なによ」

「…ごめんね?」

「…………」

「ちゃんと、謝ったかどうか、忘れたから」



“タカノ”の顔の中で、この黒い目は、特に綺麗だと思う。

この目を、意地悪く歪める時は 妖艶で。

雅を見る目は、甘い。



単なる“タカノ”の溺愛なのかと思っていたけれど。

もしかしたら“タカノ”はいつも。
雅の顔色を窺っているのかも知れない。

雅が、自分を見ているかどうか、無意識に量っているのかも知れない。




不思議な、ひと。

もっと、しっかり捕まえちゃえば良いのに。

お兄ちゃんに、いくらじゃれついてたって、雅はちゃんと、あんたを見てるのに。




「二度と…雅を泣かさないでよね」

あの子が泣くと、お兄ちゃんが困るんだから。




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