飛ばない蝶は、花束の中に


やだ……雅…
泣かすなって言ったそばから、なにベソかいてるのよ。



「だって!」


“タカノ”と同じ色の、唇。
出掛けに、互いに塗り合っていた、赤い色。

雅にはもちろん、どうしてか“タカノ”にも、やけに似合っているのは何故かしら。




「…………泣かないの!」



雅は、どう心の整理を付けたんだろう。
“タカノ”が私にちょっかい出したのは、本気なんかじゃないけど、事実なのに。

お兄ちゃんを、半ば以上独り占めした私を、どう思ったんだろう。

そして多分、錯覚だと思うけど…………僅かに…恋心にも似た感覚を“タカノ”に抱いた私を、どう思ったんだろう。




「深雪ちゃん…あたし…ごめんね、もう少し、凱司さんとこに住まわせてね」

ちゃんと、進学なんかしないで働いて……ちゃんと、ちゃんと出て行くからね?




雅は。

それが決まった未来みたいな言い方をしたけれど。

ちらりと見たお兄ちゃんは。
そんなつもりは毛頭ない、とばかりに、小さく首を振っていた。



「そんな事より、ちゃんとレシピ、送ってよ?」



それから……それから。
ひまわり。


最初の日、私、八つ当たりした。
踏み潰し、た。




…あれ、ごめん、ね。





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