飛ばない蝶は、花束の中に
「あの部屋は暑いですよ凱司さん」
「……だよなぁ」
布団をリビングに置いたまま、お兄ちゃんは“雅”を呼ぶ。
「あたしの部屋は?」
「一緒に?」
えっ、イヤよ!?
“雅”と一緒に夏休み過ごすなんて、想定外にもほどが…っ!
「あたし、リビングでいいし」
けろりとした顔で言う“雅”に、私はぞくり、と苛立つ。
「それとも…宇田川さんちに行ってますか?家事は、ちゃんとしに来ますから」
………ちょっ…“雅”?
あんた、何…言ってるの…?
私の苛立ちは、徐々に姿を変えた。
最初の、カッとした衝動的な苛立ちとは違い、じわじわと毛穴から何かが這い出るような、気持ちの悪さ。
“タカノ”はしばらく黙っているつもりなのか、灰皿と、私の食べ終えた焼き菓子の包み紙とをつまむと、キッチンのゴミ箱へと、捨てた。