飛ばない蝶は、花束の中に
夕飯が、始まる。
機嫌よく手伝う“タカノ”が、ピンク色の胡椒の粒が詰まった瓶を持ち、私の正面に座った。
キッチンには、料理が出来るようには見えない、幼い顔立ちの、“雅”。
「深雪」
お兄ちゃんに呼ばれて“雅”から目を離せば。
「あとで、ちゃんと自分で連絡しとけよ?」
「……………」
お兄ちゃん、私が黙って出てきちゃったこと……知ってるんだ……。
だって。
だってママったら。
“いくら凱司さんを慕っても、どうにもならない、いい加減諦めなさい”
なんて。
「…………嫌」
だって。
だってママったら。
「ドイツに帰る…なんて……」
いくらなんでも、遠すぎるよ。
今までは、同じ国なのだから、という気持ちがあったけれど。
今更、街並みも思い出せないような、生まれの国に行っちゃったら………
ほんとに会えなく、なっちゃうじゃない!