飛ばない蝶は、花束の中に
「……嫌…いじゃない」
「そうですか?」
嫌いだけど。
青臭いし、皮固いし、酸っぱいし。
本当は、鳥肌が立つほど嫌い。
「…………………」
いくら睨んでも、じっと見つめても、トマトは消えやしない。
「……あの…」
“雅”が、遠慮がちに私の腕に、触れた。
顔を上げれば“雅”は、ひどく困ったように苦笑を浮かべ、細かくしてあげる、と。
小さく囁いた。
私の返事を待たずに、一旦皿を下げた“雅”が、まだトマト食えないのか、と言うお兄ちゃんに。
「凱司さんだってパプリカ食べれないくせに」
と笑うのを。
ああ、仲良いんだ…
私がお兄ちゃんから離れている間に、この子は。
経緯はわからないけど。
お兄ちゃんの生活に、深く関わって来たんだ?
こうやって、綺麗な料理と、可愛らしい笑顔で。
冗談にも、お兄ちゃんに軽口をたたける程度には。
信頼関係、築いてるんだ?
って。
心が、締め付けられた。