飛ばない蝶は、花束の中に
中身の、ぷよぷよした部分を削ぎ取って、1センチくらいに刻まれた、トマト。
細かい葉っぱの混じったビネガーに絡められたそれは、美味しそうには見えなかったし、実際美味しくはなかったけれど。
にこにこ見ている“雅”の前で残すのは、しちゃいけないことに思えた。
「凱司さん、あたし、明日出掛けても良いですか?」
「…どこに行く?」
ナイフとフォークの、食事。
案の定、最初“雅”の皿に、チキンはなかった。
乗っていたのは、オムレツ。
“雅”が白い皿に白米を盛り付ける隙に“タカノ”がいきなり半分に切り取り、自分の皿からのチキンと半分ずつ、移動させた。
私、オムレツでいい、って口に 出せないままの早業に、お兄ちゃんは、面倒だから気にしなくていい、って。
先に食べ始めるでもなく、私に冷たいお茶を注いでくれた。
腹立たしいくらい、いい匂い。
“雅”の作ったものなんか、と思っていた私の意地は、あっけなく、崩れ去った。