飛ばない蝶は、花束の中に
「雅、深雪と行くか?」
「いえっ…それじゃ意味が…」
「なら明日、俺と深雪と三人で行くか」
「………凱司さん…」
“雅”が、心底困ったように、後日にしますから、と首を傾けて、小さく言った。
「せっかく、妹さん…来たんだから…私はちょっと、離れていようと…思っただけだから…」
「………なんだ」
お兄ちゃんは、呆れたように息をつくと、私に。
美術館、行きたいか?と。
まるで、私が行きたがっているかのように、訊いた。
「私…この子と2人で行きたい」
行きたくないけど。
すごく行きたくないけど。
「…深雪とか………」
ちょっとした言葉のニュアンス。
深雪“と”。
お兄ちゃんの心配の主体が、私じゃなく“雅”にある、ってこと。
もう、悔しいとかショックだとかを通り越して。
美術館に行きたいなんて、言わなきゃ良かった、と、思い切り顔に書いてある“雅”の。
その従順な、イイコみたいな顔の下に、汚い本性が隠れているはずだと、信じるしか、ない。