飛ばない蝶は、花束の中に


「雅、深雪と行くか?」

「いえっ…それじゃ意味が…」


「なら明日、俺と深雪と三人で行くか」





「………凱司さん…」


“雅”が、心底困ったように、後日にしますから、と首を傾けて、小さく言った。


「せっかく、妹さん…来たんだから…私はちょっと、離れていようと…思っただけだから…」


「………なんだ」


お兄ちゃんは、呆れたように息をつくと、私に。

美術館、行きたいか?と。

まるで、私が行きたがっているかのように、訊いた。




「私…この子と2人で行きたい」



行きたくないけど。
すごく行きたくないけど。



「…深雪とか………」


ちょっとした言葉のニュアンス。

深雪“と”。



お兄ちゃんの心配の主体が、私じゃなく“雅”にある、ってこと。


もう、悔しいとかショックだとかを通り越して。

美術館に行きたいなんて、言わなきゃ良かった、と、思い切り顔に書いてある“雅”の。


その従順な、イイコみたいな顔の下に、汚い本性が隠れているはずだと、信じるしか、ない。




< 49 / 328 >

この作品をシェア

pagetop