飛ばない蝶は、花束の中に
中学の修学旅行で使った、黒い、ナイキのボストン。
中に詰めてきたのは、全て服。
あんまり重いのは嫌だったから、下着類と、学校のジャージ。それからお気に入りの、ワンピースを何着か。
お兄ちゃんは、そのボストンを肩にかけると、私の頭に手を置いて、“雅”について行くように、促した。
「お兄ちゃん」
顔を見上げる角度が、違う気がする。
私の背が伸びたせいだと思うけれど、それでもやっぱり、離れていた時間の長さを感じて、寂しくなった。
「抱っこして?」
お兄ちゃんにべったりくっついて、抱っこしてもらって見た高さは、懐かしいものでしかないの?
廊下を先に歩く“雅”が、一瞬振り返ったけれど、慌てたように向き直って、ドアを開けた。