飛ばない蝶は、花束の中に
“雅”の出て行った、“雅”の部屋で。
残された私と、お兄ちゃん。
どうしたわけか、少し、緊張した。
「お兄ちゃん………」
私は、“雅”の机の上に乗ったままのスケッチブックをめくり始めたお兄ちゃんに、声をかけた。
抱っこは、してもらえなかった。
“雅”がいたせいかも知れない けれど、後でな、と。
頭をくしゃくしゃと撫でてくれた、だけ。
「お兄ちゃん、ごめんなさい」
何かを描いている途中だったのか、出たままの色鉛筆は、様々な色調の緑ばかり。
それを元の箱に戻すお兄ちゃんの、長い指を、見つめた。
「……何がだ。急に来たことか?それとも…雅の事か?」
小さな箱に、小分けにされた、色鉛筆と、小さなカッターナイフ。
開いたままのスケッチブックに目をやれば、流れるような曲線の、明るいグリーンの、葉。