飛ばない蝶は、花束の中に
「でも、お兄ちゃんと行きたいの」
「………海、なぁ…」
お兄ちゃんは。
この辺りの海は、深雪んちの方より汚ねぇからなあ、なんて。
長く伸びた金髪を、掻き上げる。
「汚くてもいい」
難色を示されると、是が非でも行きたくなって。
“雅”に聞こえていないはずなど無いのに、2人で、と。
強調した。
「………わかった。海、な」
お兄ちゃんは、何か言いたそうに唇を開けたけれど、小さく息をついて、笑みを浮かべた。
心の奥では、“雅”をどうするのか、気になって仕方ない。
本当は、この使用人さながらの従順さに、哀れな気持ちすら持っている。
私と同じくらいの歳の女の子が、こんな扱いで良い訳ない、とは思う。
だけど。
だけど。
当の本人に、それを打破する気がないならば、気を揉んだところで、どうにもなりゃしないし、遠慮する事もない、とも。
思った。