飛ばない蝶は、花束の中に
「あいつ…調子乗りすぎだな」
“雅”の顎から手を離してお兄ちゃんは、吐き捨てるように呟いた。
「凱司さん、座ってて?」
大きな声を上げた私を気にしたのだろう。
“雅”は小さく、遠慮がちにお兄ちゃんの胸を、押した。
素肌の、胸を。
私、どうしたいんだろう。
お兄ちゃんを独り占めしたいのは、そうなんだけど。
“雅”を哀れむ気持ちも、嘘じゃないんだけど。
変な違和感が、たまらなく不快で。
「お兄ちゃん、海、入れないくらい汚い?」
「あー…、入りたいのか?」
「…水着、持って来てないんだけど、入りたいな」
だから。
入れるくらい、綺麗な海に、連れて行って?
小さいとき、連れて行ってくれた海とか。
「あそこは…急には無理だな」
「どうして?」
「覚えてないのか?レダン島だったろ?マレーシアだぞ?」
“雅”はまた、何も聞こえていないかのように、冷蔵庫を、あけた。