飛ばない蝶は、花束の中に


「あいつ…調子乗りすぎだな」


“雅”の顎から手を離してお兄ちゃんは、吐き捨てるように呟いた。



「凱司さん、座ってて?」


大きな声を上げた私を気にしたのだろう。
“雅”は小さく、遠慮がちにお兄ちゃんの胸を、押した。

素肌の、胸を。





私、どうしたいんだろう。

お兄ちゃんを独り占めしたいのは、そうなんだけど。


“雅”を哀れむ気持ちも、嘘じゃないんだけど。


変な違和感が、たまらなく不快で。





「お兄ちゃん、海、入れないくらい汚い?」

「あー…、入りたいのか?」

「…水着、持って来てないんだけど、入りたいな」




だから。

入れるくらい、綺麗な海に、連れて行って?

小さいとき、連れて行ってくれた海とか。





「あそこは…急には無理だな」

「どうして?」

「覚えてないのか?レダン島だったろ?マレーシアだぞ?」



“雅”はまた、何も聞こえていないかのように、冷蔵庫を、あけた。



< 65 / 328 >

この作品をシェア

pagetop