飛ばない蝶は、花束の中に


「マレーシア!?」


外国だったっけ?

確かに子供心にも、とても綺麗だった気がしていたけど。



「お前、真っ赤に焼けて、泣いたじゃないか」

一晩中。

と、お兄ちゃんは笑う。




そ、うだったかしら…。


“雅”は、本当に聞いていないのか、カチャカチャと食器を並べたり、何かをかき混ぜたりしていたけれど、青白い顔のまま、カップを2つ、運んできた。


ひとつは、私のカフェオレ。
ひとつは、お兄ちゃんのブラック。


特に何を言うでもなく、かすかに笑む“雅”に、お兄ちゃんはお礼を言わない。


だから、私も言いそびれたのは、仕方がない。



ちょうど、“タカノ”がリビングに入ってきて。

“雅”の意識は“タカノ”に向いて、私に背を向けちゃったんだから。



仕方、ない。





< 66 / 328 >

この作品をシェア

pagetop