飛ばない蝶は、花束の中に
「マレーシア!?」
外国だったっけ?
確かに子供心にも、とても綺麗だった気がしていたけど。
「お前、真っ赤に焼けて、泣いたじゃないか」
一晩中。
と、お兄ちゃんは笑う。
そ、うだったかしら…。
“雅”は、本当に聞いていないのか、カチャカチャと食器を並べたり、何かをかき混ぜたりしていたけれど、青白い顔のまま、カップを2つ、運んできた。
ひとつは、私のカフェオレ。
ひとつは、お兄ちゃんのブラック。
特に何を言うでもなく、かすかに笑む“雅”に、お兄ちゃんはお礼を言わない。
だから、私も言いそびれたのは、仕方がない。
ちょうど、“タカノ”がリビングに入ってきて。
“雅”の意識は“タカノ”に向いて、私に背を向けちゃったんだから。
仕方、ない。