飛ばない蝶は、花束の中に
はよー。
と、気の抜けた挨拶をする“タカノ”は、結びきれない長さの髪を両手で大きく掻き上げて、今日も暑いねぇ、と真っ直ぐ冷蔵庫を開けた。
「ちょうど暑いときに半端な長さになっちゃいましたねぇ」
私に向けたのとも、お兄ちゃんに向けたのとも違う、奇妙に沈んだ笑顔で言った“雅”は。
“タカノ”の襟足の髪を掬った。
「鷹野」
「ん~?」
グラスにたくさん氷を入れ、冷たいコーヒーを注いだ“タカノ”は、お兄ちゃんに呼ばれて。
私の正面の席に、座った。
「…あんまり無理させんな」
「だって可愛いんだもん」
私には何のことだか解らないけれど、お兄ちゃんと“タカノ”は、さらりと会話を交わす。
「大丈夫だよ、今日、雅ちゃんバイトないし」
「だから馬鹿みたいに家事に没頭すんだろが」
「昼寝するように凱が言ってやってよ。雇い主だろ」
ああ、“雅”の話…?