飛ばない蝶は、花束の中に
「深雪ちゃん、何でそんな雅ちゃんばっかり見てるの」
「…………え?」
「減るから、あんまり見つめないでよ」
「…減るわけ…ないじゃない」
お兄ちゃんも…!
笑ってないでそろそろシャツ着てよ!
ふわりと、甘い香りがして。
“雅”が運んできたのは、デニッシュ生地のような、パイ生地のような。
何層にも重なったような生地の上に、クルミと、つぶつぶした、黒っぽい何かが乗った、ハート型のパン。
「焼きたて……です」
もし嫌なら、普通のクロワッサン焼くけど……、と、不安そうに私を見る“雅”に、やっぱりイラっとするけれど。
「あ…クロワッサンの生地…なのね」
そういえば、そうかも知れない。
重なった生地は、バターの香りが強くて。
薄い表面は、パリリと焼けていて。
「……美味しそう。あんたが作ったの?」
思わず、ひとつ手に取って、“雅”の顔を、見上げた。
「…………………」
「……」
“雅”は口を開けかけたまま、どうしたわけか、みるみる。
頬を赤らめた。