飛ばない蝶は、花束の中に
「深雪、水着買うか?」
「うんっ」
どうしても“雅”が気になって仕方ない私に、苦笑を浮かべたお兄ちゃん。
ちらりと“雅”を見たけれど。
“雅”は、何も乗らない皿を運んできただけで、お兄ちゃんと視線を合わせることは、なかった。
クロワッサンのサンドイッチ。
クルミのソフトクッキー。
それからハート型の、お菓子のような、パン。
コーヒーと紅茶とカフェオレで済まされた食事の間中、“雅”はお兄ちゃんと目を合わせなかった、と思う。
「水着なら、ほら由紀さんの実家のそばの店。あそこなら可愛いのいっぱいあるよ」
雅ちゃん、もうひとつ食べなよ、と、大皿からクロワッサンを取ってやりながら、“タカノ”は思い出したように視線を上げて、そう言った。