カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―

「大体、知らない人から聞いた話でウソくさかったんですよねー。
……阿部さんて、他人に厳しくて……でも、文句言えないくらい、自分にそれ以上厳しくて。……美人だし、人望あるし。ちょっとプライド高そうですけど! そういうの、簡単に変わらないんじゃないですか」


口を尖らせて、拗ねるように彼女は言う。


「……あなたって、本当……」
「『本当』、なんですか」
「バカ素直ね」


ふ、っと笑って私がいうと、森尾さんはますます口を尖らせて、「褒めてないですよねぇ?」と、不満げな顔のまま戻って行った。


褒めてるつもりだけど?
その、バカがつくほどの、自分に正直で素直な行動と言葉。それが今の私が一番欲しくて必要なのよ。

周りなんてどうでもいいくらい、振り回したってお構いなしっていう、そのチカラ。


後ろ手を組みながら歩いて行った森尾さんの後に続こうと、方向転換した足を踏み出そうとしたときだった。
先を歩く森尾さんが、ピタッと止まって、くるりと振り向く。

これ以上なにかあるのかと、きょとんとした顔で彼女を見ると、真剣な面持ちで彼女は人差し指を立てて言った。


「阿部さん。神宮寺さんにしといたほうがいいですよ」


はぁ。なにをまた。藪から棒に。


「……なに、改まって」
「だって、KANAME。怪しいですから」



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