カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―

「……謝るだけなら子供だって出来るわ。ちゃんと意味を理解して、活かさないと」
「わかってますよぉ……。あーあ。匠先輩はどうして営業じゃなくなったんでしょう」


目の前に指導係がいるっていうのに、よくそんなこと言えるわ。

ある意味、裏表のないこの子は私とその辺りは似たタイプなのかもしれない。
もちろん、人間関係や仕事に支障をきたすことは発言したりはしないけど、それ以外なら、基本、思ったことを口にしてしまうから。


「『歳の差がありすぎ』とかなんとか言ってなかった?」
「ええ? そんなこと言いましたっけぇ?」
「……どうでもいいわ」


わざとらしく小首を傾げ、人差し指を唇に添える森尾さんを置いて、右にある扉を開けた。

ドサッと椅子に腰をおろすと、あとから入ってきた彼女も席に着いた。
ちらっと森尾さんの様子を窺う。

ふわりとした髪を耳に掛け、色鮮やかなネイルの指でキャラクターのペンを持ち、今しがた持ってきた資料と睨めっこをしている。


……年中頭の中はお花畑なの? いや、そんな可愛いもんじゃないか。彼女は計算してるから。

神宮司さんは、ステータス的にすごくいい男。
だからでしょ? 急に神宮司さんもキープしようと思ったのは。

大体、神宮司さんだって。

ついこの間、「阿部がいい」とか言ってたのに、結局こういう可愛い子を選ぶのよ。

……まぁ、別に、説教されてるところをちょっと助けて、少し話を聞いてあげただけなんだろうけど。
でも、そうやって誰にでも優しいから、社内だけじゃなく、営業先の女性にまで勘違いされちゃうのよ。


――――要だって。

私のことを「気に入った」とかなんとか言ってるけど、一番読めない男だし。
今日もわけがわからないけど、結局私を仕事に利用しているだけなのかもしれない。

……ただ、オーシャンのペンが好きなだけで――。





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