カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―

こんなことで、ドクドクと脈打つのは、今私が弱っているから?
それとも、30を過ぎてしまったから? だからあんな誘いのひとつやふたつで動揺してるっていうの?

ほんの少し前には、結婚相手として条件を満たしてる人を見つけては、手に入れることだけを考えていられたのに。

その自分が、いまやこんなありさま。

要に後ろから抱きしめられたり、神宮寺さんに壁に追い詰められてはなにも言えなくて。


社員証をそのまま首から外してカバンに入れる。
オフィスを出たところで私の行き先がなくて、また足を止めた。


いつ電話が鳴るのか、とカバンの中の携帯が気になって、落ち着いてコーヒーすらも飲めない。

まだ辛うじて明るい空を見ては、一秒ごとに色を変える太陽に“人間”を重ねて思う。

燦々と、清々しいくらいに純潔な面を見せたと思えば、この夕陽のように情熱的で魅惑的な顔を覗かせ、逃げるように消えていく。

森尾さんも、神宮寺さんも、要も――そんな感じ。


「他人の本心なんて、わかるはずがないのよ」


だけど、私だけ。
私だけ、そうやって色鮮やかなものなんかなくて、むしろモノクロのような人間である気がしてならない。

ある程度のことは、自分次第でなんでもことが上手く運ぶなんて思ってた。だから、その考えが覆されてから、どうしていいのかわからなくなるときがある。

それと同時に、差し出されている手を信じられなくて、素直になれない自分が邪魔をする。


ずっとずっと、自分は輝いていられると思ってた――。


白黒に見える自分の手を空にかざしかけたときに、携帯の着信音でその手を引っ込めた。
気持ちを落ち着けて、カバンに手を入れ携帯を出す。


あれ……この音はメールじゃない? 神宮寺さんは「電話する」って言ってたのに。もしかして、やっぱり仕事切り上げられなかったとか?


パスコードを入れて、待ち受け画面からメールのアイコンをタップする。


今夜ダメになるなら好都合。
こんなに動揺してるまま、二人きりで会ったって…………え?




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