乱華~羽をくれた君~Ⅱ【完】

その時、舞香がトイレから戻ってきた。


「あれ?奈緒まだ着替えてないの?」


「あ…うん、今着替えるとこ」



とりあえず動揺を隠して、バッグからユニフォームを取り出し、着替えることにした。

舞香に見られないように素早くロッカーを開けて中にバッグを押し込み、鍵をしっかりとかけた。


もう誰も信用できない。

誰にも言えない…


ロッカーを開けるとあの残酷に切り裂かれたユニフォームがあるのかと思うと、具合が悪くなる。


「奈緒、顔色悪いけど…大丈夫?」


一緒にカウンターの仕事をしていた舞香が心配そうにあたしの顔を見つめた。


「…うん」


返事をしたものの、実際大丈夫なわけがない。

陸さんや美優さんの事もあるのに、ユニフォームの事もあって、もう頭が痛い。




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