絶滅危惧種『ヒト』
そう言われても、咄嗟には何も思いつかない。なんせ朋美は一度もデートの経験がないのだ。


例えば今が日曜日の午前中なら、いくつか候補はあげられる。


でも時刻は四時半を過ぎたところ。明日も学校なのだから、遅くまでは遊べないのだ。


「あっ、そうだ」



「え?」


「孝明さんの家に行きたいです」


「ええっ!」


「二人で大掃除しましょう」



「今から?」


「時間が許すところまででもすれば、全然違うでしょ」


「それは凄く助かるんだけど、でも良いの?」



「ええ」


朋美は微笑んだ。



「じゃあここで掃除の材料を買ってくかな」


孝明は目の前の店舗を指差して微笑む。


「はい。でも、ここが待ち合わせ場所で、ちょうど良かったですね」


朋美は笑顔で頷くと、そのままドアを開けて車の外に出た。


二人は並んでドラッグストアの中に向かう。


朋美の人生初のデートは、ドラッグストアでの買い物になった。


孝明は掃除用のスプレー洗剤なんかをカゴに入れていく。


朋美はふと思いついたことがあって、孝明に一言言ってから、別のコーナーに向かった。


目的のモノがどこに置いてあるのか、まったく見当もつかないから、勇気を出して店員に聞く。


これは朋美にとって、本当に勇気がいる行為だった。

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