絶滅危惧種『ヒト』
「新種ですよね?」


直樹の問いに、今度は教授がツバを飲み込んだ。


竹井は内線電話を取ると、外来の診察に繋ぎ、すこし会話をすると電話を切って直樹を見つめた。



「患者は南極観測隊員で、昨日日本に帰ってきたばかりらしい」


「え?」


南極観測隊員という言葉で、直樹は昨夜弟から聞いた、彼女の叔父の話しを思い出した。


「やはり新種の可能性が高いな、厚労省に連絡を入れよう」


竹井はまず病院長に連絡を取ると、その後厚生労働省に電話をかけた。


過去に臨床例のない症状の患者。


確定ではないけれど、伝染病の可能性が高い。

もしそうなら、早急にワクチンを作らなければならないのだ。


「今夜は帰れそうにないね」


竹井にそう言われて、直樹は今夜の晩酌を諦めた。


晩酌といえば、あの南極の氷……。


そこで直樹はふと思った。


弟の彼女の叔父さんが南極から日本に帰って来て、そして弟と会っている。

もしかして、その患者というのは、その叔父さんではないのか?

なら、弟は患者と接触していることになる。

自分はその弟と接触しているわけで……。

直樹は自分の想像に身震いした。

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