絶滅危惧種『ヒト』
「あれ、聖人じゃないか? どうかしたのか?」


突然声をかけられて、振り返るとそこに、兄の親友の井上が立っている。


「井上さん!」


「何でここに?」


「それが……彼女の叔父さんが亡くなったって連絡があって、ここに来たんですけど、その叔父さんが特殊な病気らしくて、ずっと待たされてるんです」



「それって……もしかして例の南極の?」


「ええ、そうです。あの氷をくれた人です」


「そ……うか……」


「っていうか、井上さんは何でここに?」



「それがなぁ聖人……ちょっと」


井上は周囲にいた梓たちに気がついて、聖人を手招きで離れた場所に誘う。


「まだハッキリとは分からないけどな、新種の病原体が見つかったらしい」


「まさか……」


聖人は目を見開いた。それに対して井上が頷く。


「もしかしたら新種の伝染病の可能性もある。おまえは患者と接触しているから、もしかしたらヤバいかもしれないな」


「嘘……」


「冗談……と言いたいところだが、その可能性はゼロじゃない。もっとも今はまだ何も分からないけどな。ただ……可能性がゼロじゃない以上、あまり人と接触しないようにな」


「おい、井上! 何やってるんだ。行くぞ」


「ああ、はい。じゃあな聖人」


井上は聖人に向かって手をあげると、小走りで立ち去った。

< 79 / 223 >

この作品をシェア

pagetop