おかしな二人
人通りのわりとあるその路地でそんな凌の背中を見たあと、あたしは手持ち無沙汰のように夜空へと視線を移した。
月は雲に隠れ、本来の姿を霞めていた。
星は見当たらず、夜風が冷たい。
あたしはコートの襟首を合わせるように、ギュッと両手で引き合わせ白い息を吐く。
ポケットに手を入れると、携帯とストラップのタコが手にぶつかった。
今、何時だろう?
いくら水上さんの帰りが遅くなるとはいえ、そろそろ帰宅しないとまずい気がする。
俯いたまま何かを考えている凌に声をかけるのは、なんとなく憚られたけれど。
帰りが遅くなって、水上さんに大目玉を食らうわけにはいかない。
下手したら、職を失ってしまうかもしれないのだから。