おかしな二人
英嗣は、今日一日何もしなくていい、と言っていたけれど、あたしはじっとしていることができなかった。
だって、頭の中に巡る出来事が、否応なく胸を締め付けてくるのだから。
それを考えたくなくて、あたしは黙々と家中を掃除して回る。
こんなところまでやる? ていうくらい細々と掃除して歩き、気がつけば日付が変ってから何も胃に入れていないまま夕方近くになっていた。
さっきまで眩しすぎる光が入り込んでいた窓からは、もうオレンジ色が差し込み、否応なく切なさを思い出させた。
そのオレンジから目を逸らすようにして、一度深く息を吸い吐き出してからキッチンへいく。
食欲はそれほどわいているわけではなかったけれど、精神の疲れからか体が少しふらつくのを感じて、食べないよりはましだろう、と冷蔵庫にあったヨーグルトを取り出した。
ソファに座り、スプーンでひと口ずつゆっくりと口に運ぶ。
凌は、今頃どうしているだろう……。
また熱がぶり返したりしていないだろうか。
あたしに連絡をするのが気まずくて、一人つらさの中を耐えているかもしれない。
けれど、それを確認するために連絡をしようという気には、とてもなれなかった。