花火
ていうか、え?
どういうことだ……?
ていうか、今、リン、悲鳴を──
「もうっ、抱きついちゃダメだってば!私、先に帰ってるから!レノンも早く──」
がさっ、とリンが立ち上がる気配がして、俺はつい慌てて踵を返して二人から見えない場所に身を潜めてしまった。
二人はまだ何かを言い合ってるみたいだけど、内容までは聞き取れなかった。
待て……落ち着け。
──先に、帰ってる?
ってことは、一緒に住んで……
目の前が真っ暗になる感覚がした。
リンは男と住んでいながら、俺と?
……んだよ、それっ!
土壁をドンッ、と拳で叩いたけど、音はならず、痛んだのは俺の手だけだった。
くそ……っ、意味わかんねぇ。
最初から俺は、リンに裏切られてたってことか?
俺の前でかわいく笑っていたリンは偽者だったってことか──?