花火
*+.。.+*.。.
「……合同授業?」
「はい。実際の授業時間は使えませんが、土曜日の午後に課外授業として生徒を集めて。田辺先生が授業された作品を僕の授業で英訳させるんです。田辺先生は日本語の美しさを教えて、僕はそれを英訳させる。日本語の捉え方はいろいろですから、生徒それぞれがいろんな英語に訳してくれたらおもしろいと思うんです」
「……なるほど。それはおもしろそうですね」
「でしょう?」と得意気にレノンが笑顔を浮かべる。
さすが頭の固い日本人とは違う。
受験のために教科書に沿った授業ばかりだけど、そんなのツマラナイはずで。
俺も高校の時はそう思っていたし。
だからと言って、実際は教科書以外の授業をするタイミングも取れなくて、殆どしたことはない。
「1週2コマを、国語と英語の2週で。2回くらいなら、生徒も集まりやすいと思いますし。どうでしょうか?」
「そうですね……」
考える俺を真っ直ぐじっと見つめてくるレノンの目は、リンに似ていると思った。
一緒にいると、性格とか癖が似てくるのと同じだろうか?と思ってしまう。
……っと、仕事中に何考えてるんだ、俺。
リンのことは置いといても、レノンの提案は心惹かれる。
やってみたいと思った。
「……わかりました。じゃあ、これから上にも掛け合いに行きましょう」
「決まりですね!良かった」
俺にはない、物事を動かす才能。
レノンのことを“教師”として尊敬した瞬間だった。