花火
会えなかった……、いや、会わなかった理由は今はまだ、俺の中に封印しておく。
今はただ、俺の彼女としてリンに傍にいてほしかった。
……最低なことしてることは承知の上だ。
腕に力を入れてリンを抱き締めると、リンも腕を俺の背中に回してきた。
小さくて細い手が少し遠慮がちに触れてくる。
小さなことだけど、嬉しくて。
「リン……」
「……うん……」
「ごめ……いや。ありがとう」
「……?ううん、先生が無理してないなら良かったです」
……もう負けっぱなしだな。
あいつには敬語なんて使ってなかったし、名前だって。
それは心を許してるか許してないかを表してる気がして。
俺にはリンから自然な言葉を言わせることはできない。
小さいことを気にするガキみたいな自分に、心底苛立ちを覚えて、嫌気が指した。