花火
「……嬉しかった……っ!」
「!」
戸惑った。
リンが泣いていたから。
意味わかんねぇんだけど!
まだ何も泣かせるようなこと言ってないし!
「……先生の授業受けられる日が来るなんて思ってもみなかったから。嬉しかったです」
「!」
リンは目に涙を溜めたまま、笑顔を浮かべた。
本当にそう思ってくれてるのか?
それが本当なら授業して本当に良かったな、と嬉しさが広がる。
「……そっか。なら良かった」
「もっと先生の授業、受けたかったです。3年も通ってるのに、授業では一度も習えなかったなんて、神様に意地悪されてるみたい」
悲しそうにリンは笑うけど。
「……俺はそれで良かったかな」
「え?」
「一度でも教えてたら……」
「……あ」
「な?こうやって、リンと二人でいることなんて、きっとなかった」
あの始まりの日自体が、きっとなかっただろう。
俺がリンのことを知らなかったから、始まったんだから。
俺は一度でもリンに授業することができて、満足だ。