花火
 

「あの時、俺がタバコ吸ってたから余計なこと考えてたんだろ?」



「う……まぁ、です」



「つい手を出しちゃったんだよな。先週はあいつらのせいでリンに会う時間なくて、疲れも溜まってたし」



「!そ、それはあの人たちに失礼じゃ……」



「いーのいーの。あいつら、大学の友達でさ。前、話したことあっただろ?俺が真面目だった~って」



「あ、はい」



先生の部屋に2回目に来た時に聞いたことだ。


あれ?でも、大学の時はちゃらんぽらんだったって……



「あれ、高校の時の話。高校までの自分を捨てたくて、大学の時に地元を離れた。よくある話で、大学デビューってやつだな」



「……」



「マジでさ、俺、大学に入る前までは自分が嫌いだった。兄貴二人いるんだけど、二人とも出来が良くて、でも俺は悪くて。少しでも見離されたくなくて、がむしゃらに勉強したりしてさ。親とか兄貴とか他人の目を気にして、自分が自分じゃないみたいだった。……リンと同じだ」



「!」



「でも、大学に入って解放されて。あいつらのお陰かな。バカなやつらだけど、それで救われることも多かったし」



「……大好き、なんですね。あのお友達のこと」



「ふ、大好きって。別にそんなんじゃねぇけどな」



くくくっ、と笑ってるけど、きっとそれは照れ隠しなんだと思う。


だって、先生の表情は楽しそうで嬉しそうだから。


そんな大切なお友達に嫉妬しちゃうなんて、私は何て心が狭いんだろう……。

 
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