花火
 

*+.。.+*.。.



俺は放課後、図書館で本をパラパラと捲っていた。


今日は仕事もほぼ片付いていて、思う存分、本の世界に入り込める時間。


これは暇な時の俺の日課だ。


心休まる唯一の時間のはずなのに、今心の中を占めるのは1つのこと。


……まったく。ほんと、とんだミスだな……。


はぁ、と小さくため息をついた。


リンが自分の高校の生徒だと知った今日1日、気が気じゃなかった。


まぁ、あいつ──リンは言いふらすようなタイプじゃないだろうけど……。


それでもやっぱり、気になってしまう。


俺は気を背けるように本に目を落とし、文字を追う。


昔からそうだけど、俺にとっては活字を見る時が一番落ち着ける時間。


よく“意外”って言われるけど、俺は国語教師だ。


文章の力を伝える仕事がしたくて、一番それを叶えることのできる教師になった。


……何だかんだ言っても、俺は結局、本の中の綺麗な世界に惹かれているのかもしれない。


でも。


──ダメだ、やっぱり全く頭に入ってくれない。


こんなの、初めてだ。


物事に囚われて、本の内容が頭に入ってこないなんて。


はぁ、と嘆息し、本をパタンと閉じて本棚に戻す。


──よし、今日はさっさと帰ってしまおう。


そう思った時。



「…………センセ?」



囁くような声が背後から聞こえてきて、俺は振り向いた。



「ん?なん──」

 
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