花火
 

図書室にいると結構頻繁に生徒に声をかけられるから、普通に振り向いたけど……


そこにいたのは──リン。


俺が目を丸くするのに対して、リンは何事もないかのようににこっと笑った。


……例の“高校生の笑顔”で、だ。



「田辺センセ?オススメの本、教えてくれませんか?私、本読むの好きなんですけど、次読む本は何がいいか悩んでて」



「!……あぁ。いいよ」



「わ、嬉しいです!ありがとうございます」



にっこりと笑うリン。


……朝と同じでその目の奥は愉しげだ。


早々に接触してきたか……。


接触してきたということは、何か目的があるということ。


目的は何だ?


その笑顔の裏に、何を隠している?


リンの意図が全く掴めなくて、警戒せざるを得ない。


……と言っても、俺はリンのことを何も知らない。


それだけで負けた気分だった。


まずは敵を知ることから始める必要がありそうだ。

 
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