花火
 

「──嘘。入れてるよ。……気持ちよくなるクスリ。また一緒に気持ちよくなろうか?」



「──!」



にやりと俺は笑う。


中村は俺の言葉が不意打ちだったのか、頬をピンクに染めて、俺のことをじっと睨んでいる。



「……ふ、かわいいねぇ。まったく。安心しろ。ただのコーヒーだから。で?男に捨てられたのは立ち直ったのか?」



「──……そんなの、どうでもいいことです。ていうか、センセ、立場弱いのわかってますか?」



中村は俺の言葉にカチンときたのか、急に強気になった。


──口や態度はどんなに大人ぶっていても、こんなことでイラッとするなんて、やっぱりただのガキだな。


にっこりと余裕の笑みを浮かべた俺は、中村の顔を覗き込む。



「……中村サン。それは脅し?」



「どうでしょうね」



得意そうに中村は言うけど……


ガキの戯言。


この真面目ちゃんに、言えるわけがない。


“私は田辺先生とエッチしました”、なんて言葉。

 
< 29 / 178 >

この作品をシェア

pagetop