花火
 

「──そ。じゃあ、スリルを楽しむことにしようか」



「──」



揺れない俺に、少し悔しそうな表情をする中村。


中村の性格が大体掴めてきた時点で、俺の勝ちだよ。


所詮、まだまだ経験の少ない子供。


脆いな。



「それよりも……おまえ、あの夜は俺のこと知ってて、声かけてきたのか?」



「──雰囲気違すぎて最初は気付きませんでしたけど。……センセイ、学校と全く表情も口調も違ったし……違いましたし」



「──ぷ。ほんと中村は真面目だね。いいよ?ここ学校じゃないから敬語じゃなくても」



「!真面目なんかじゃ……!」



「いいよいいよ。俺も中村と同じタイプだったからわかる」



「──はい?同じ、タイプ……?どこが……」



中村は眉をひそめる。


まぁ、そう思うよな。


今はこんなだけど、昔は超がつくほど真面目だった。


10人に聞いてほぼ全員がそう言うくらいに。


周りの目を気にして、親や兄弟の目を気にして、教師の目を気にして。


自分の気持ちに素直になれなかった。


まぁ、大学は地元から遠い場所だったし周りの人間がガラッと変わったのもあって、人が変わったように好き放題してたけど。


……なんて、中村に細かく話す気なんてないけどな。

 
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