【完】ヴァンパイアとチョコレート
「ここ、人間界には魔界と通じている場所がいつくかある。この近くの廃屋がその一つだ。俺はそこからルネと共にやってきた」

「…………」

ミーナは黙ってその話を聞く。

「今は俺が封印をしたから、他の奴が来ることは無いだろう」

そしてライルはテーブルの上のチョコレートを一つ口に入れた。

「昨日、俺はお前を連れて魔界へ行った。その時、お前が部屋を出た後、薄暗い廊下に出ただろ?そこにはたくさんの扉があったはずだ」

「扉……」

「扉の向こうにはそれぞれ違うヴァンパイアが住んでいる。あそこは魔界の中にあるヴァンパイアの城なんだ」

(魔界の……ヴァンパイアの城?)

「力の強いヴァンパイアは城に部屋を与えられてるだよ。僕みたいに大して力のない者にはそんなものないんだけどね」

ルネは長い尻尾をくねらせながら付け加えた。

ーーヴァンパイア。

昨日夢で見たアンバードもそう言っていた……。

「で、でも如月くんは人間……だよね?」

「いや……俺もヴァンパイアだ」

ライルは自嘲気味に言って軽く息を吐いた。

「ご主人はキングの血を引いているからあの部屋を与えられているんだよ」

ルネは金色の瞳をきらめかせて言う。



< 81 / 185 >

この作品をシェア

pagetop