流れ星になったクドリャフカ〜宇宙で死んだ小犬の実話〜
「ママー、見てみて。風船ガムにワンちゃんのカードがついてたよ」
どこからの座席から、子供の声が聞こえてきた。
ワンちゃんのカード。
クドリャフカのカード。
世界中で、スプートニク2号の記念切手やグッズが出回っている。
みんながそれを喜んで買っていく。
クドリャフカが生きていると信じて、夜空に手を振る。
プラネタリウムも盛況で、スプートニク2号の演目は大人気らしい。
スプートニク2号が、クドリャフカが、世界を動かす。
世界の中心にある。
「クドリャフカ」
寝ぼけたように、その名前をささやいた。
うとうとと、列車の揺れにつられて体も揺れる。
心地よい揺れに、意識も波打つ。
ふわふわとした感覚に、意識が夢の世界に足を踏み入れる。
「あれぇ、ママー。このお兄ちゃん何してるの?」
「こら、寝てるんだから静かにしてあげなさい」
「えー、でも、泣いてるよぉ」
そんな親子の会話を最後に、僕は夢の世界に入り込む。
どこかで期待していたクドリャフカの夢は、見なかった。