deep forest -深い森-
「…離して!何をなさるおつもりなの?」
「何をも何も。すぐそこに車を待たせてある。オレの家に来い」
「!」
「オレはオマエが気に入った」
「私は貴方を知りませんわ!」
「何、抱き合えば解る。まさか生娘でもあるまいに」
「…!」
その言葉に、梨乃は顔を真っ赤にして唇を噛んだ。
「降ろして下さいませ!」
「…嫌だ」
「降ろして!人を呼びますわ」
「好きにしろ。深見の力で揉み消してやる。オレは欲しいものは今まで全て手に入れてきたんだ。オマエもオレの手の内だ。諦めろ」
「…!」
なんて傲慢!
梨乃はカリッと園生の顔を引っ掻いた。
すると園生は楽しそうに笑い出し、梨乃を降ろして肩を揺らしながら…
「随分と気の強いお姫様だな。猫又でも隠しているのか?」
と、言って、梨乃の両手を掴んだ。
そして。
「強引なのが気に入らないのか?なら、これならどうだ?」
「…?」
「貴女が気になって仕方がない。僕に1日だけ、貴女の時間をもらえないだろうか?」
と、言って、優しく微笑んだ。
「〜〜!」
すると梨乃は、先程とは別の意味で赤くなった。
その姿を見て、園生は。
「なんだ、言っている事は同じだろうに」