その衝動の果て…【完】

父の事

色々なものが見えるようになって崩れ去った現実の中には、

俺の属した家族もあった。目の前に広がっていた家族…

穏やかな家庭。静かな兄と、愛らしい母と、その母を溺愛する父。


父はとにかく母をこわれものを扱うように大切にして守っているように見えた。

決して心身の強くない母を陰に日向になって支えていた。

そして、母もそんな父を信頼し寄り添っていた。

二人はお互いに遠慮しながらもお互いを必要としていて相思相愛に見えた。

そんなお似合いの両親が、結婚したのは出会った学生時代から10年以上、

それから兄が生まれたのはもっと遅かった。


この二人のその違和感は、二人の記憶をのぞくことである程度理解できた。

母はオヤジに出会う前に出会った男の作為的なしがらみに絡め取られていた…


母にとって今でも最愛の男…

アイツは2人をことある毎に邪魔していた。



実は僕には呼ぶなら男親の父と言える男が3人いる。

それもこんな能力を持つようになって知ったこと…


1人目は、遺伝子上の父親。

2人目は戸籍上の父親であるオヤジ。

もう1人、3人目は俺を産みだした元になる親のような存在のアイツ…
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