魔法のキス
夜7時に店を閉めた。
「店長、今日は考え事ばかりしてましたね。大丈夫ですか?」
坂口さんから声をかけられた。
「ああ、ごめんなさい。いろいろ考えることが多くて。昨日からありがとうございました」
「いいえ、またいつでも来てくださいね」
私がホームレスになった時は坂口さんを頼りにするかも……。
なんでもしますから住まわせて下さいみたいな感じで。
私はいったいこれからどうなるんだろう。
「あ、来るときは電話して下さいね。元カレがたまに来ることがあるので」
えっ?
何故元カレが来るわけ?
「元カレが来るの?」
「そうなんですよー。彼女は常に他にいるのに、私のことを思い出すと来るんです」
なにそれー!
「坂口さんはそれでいいの?」
「嫌だって毎回言うんですけどね。強く拒めなくて。やっぱりダメ男が好きなんですね、私は」
それであそこにいつまでも住んでるのか。
やっと謎が解けた。
男も女もあそこで物を考えてるんじゃないのか。
なんだか似たような言葉があったような気がするが、なんだったのかは忘れた。