魔法のキス

夜7時に店を閉めた。


「店長、今日は考え事ばかりしてましたね。大丈夫ですか?」


坂口さんから声をかけられた。


「ああ、ごめんなさい。いろいろ考えることが多くて。昨日からありがとうございました」


「いいえ、またいつでも来てくださいね」


私がホームレスになった時は坂口さんを頼りにするかも……。


なんでもしますから住まわせて下さいみたいな感じで。




私はいったいこれからどうなるんだろう。


「あ、来るときは電話して下さいね。元カレがたまに来ることがあるので」


えっ?
何故元カレが来るわけ?


「元カレが来るの?」


「そうなんですよー。彼女は常に他にいるのに、私のことを思い出すと来るんです」


なにそれー!


「坂口さんはそれでいいの?」


「嫌だって毎回言うんですけどね。強く拒めなくて。やっぱりダメ男が好きなんですね、私は」


それであそこにいつまでも住んでるのか。
やっと謎が解けた。


男も女もあそこで物を考えてるんじゃないのか。


なんだか似たような言葉があったような気がするが、なんだったのかは忘れた。


< 291 / 344 >

この作品をシェア

pagetop