不滅の妖怪を御存じ?




竹内蛍一人に任された山は当たり前だが管理が行き届いておらず、藍が歩むのはいわゆる獣道。

大きな岩、無造作に生い茂る植物。
うごめく虫たち。

どこかおどろおどろした印象を与えながらも、これが本来あるべき山の姿なのだな、と思った。


「命に終わりがあると言うのなら、森は死ぬのだろうか。山は死ぬのだろうか。」


いつだったか屋根の上で竹竿を振り回しながら弓月が言っていた言葉を思い出す。
たとえ人間が滅びようとも、山は永遠に生命を繰り返すのだろうな、と藍は思う。


「この前の嵐でだいぶ木が倒されて危ないから気をつけろよ。」

先を歩く竹内蛍にそう呼びかけられた。
軽い足取りで藍は苔が生えた岩の上を歩く。


「有田って山歩くの速いんだな。」

「そうかな。」


青々と茂る植物に囲まれるのも悪くない。
竹内蛍の二、三歩後ろを歩きながら藍は思った。




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