不滅の妖怪を御存じ?
木々が多くなり、周りも暗くなってきた。
まだ日はあるというのに、日の光も届かないような深部にまで来てしまっていたのか。
ぐったりとしたシダ。
土を覆い隠すように生えている苔。
ぞくりと、寒気がした。
引き返そう。
そう思ったとき、目の端に見慣れたものが映った。
「お手洗い?」
丸っとしたフォントでそう書かれた看板が黒々とした木に引っかかっていた。
嵐でトイレの看板がこんな森の奥深くにまで吹っ飛んでしまったのか。
荘厳な雰囲気の森にお手洗いの看板があるのはなんだか間抜けな景色だ。
なんとなくそのお手洗いの看板を近くで見たくなり、藍は足を進める。
パキリ、とまた足元で何かを踏んだ。
藍は下を見る。
先ほど踏んだような木札が藍の足により踏みつぶされバラバラに砕けていた。
何故こんな山奥に木札が多いのか。
藍は眉をひそめながらも顔を上げる。
するとまた不可解なものが目に入ってきた。