anjel
でも、みっくんの顔には、
安心したような、ほっとしたような表情はなかった。
むしろ、どこか不安そうな顔をしている。
「みっくん…?」
私まで不安になり、思わず名前を呼ぶ。
「…悩んでいるんだ、心臓移植を受けること」
みっくんの言葉に、みんなが息を飲んだ。
「日本じゃドナーが少なく、心臓移植をしたくても出来ない人が多いのが現状なんだ。だから、手術するとしたら、少しでもドナーの多い、アメリカに行くと思う」
「…アメリカに行くのが嫌なのか?」
翔の言葉に、みっくんは首を振る。
「アメリカに行くのは、嫌じゃない。それでドナーが見つかって、助かるならいいんだ。」
「なら…」
「でも、その手術を受けて、自分が自分じゃなくなるのが嫌だ」
どういう、こと?
自分が自分じゃなくなるって……
「よく、聞いたことあるでしょ?心優しい青年が、凶悪な殺人犯の心臓を移植して、同じく殺人犯になってしまったって話。」
それなら、私も聞いたことがある。
そんなバカな、なんて思っていた。
「作り話だろ?そんなの…」
亮くんの言葉に、私も頷く。
「俺も、そう思ってた。でも、実際心臓移植を受けて、記憶転移……ドナーの趣味嗜好や習慣、性格の一部、さらにはドナーの経験の断片が自分に移ったってケースがあるみたいなんだ。」
「うそ……」
「本当、嘘みたいな話でしょ?でも、本当らしい。科学的に証明されているわけじゃないんだけど……。俺も、心臓移植をして、バンドのこととか忘れて、ギターを弾かなくなるかもしれないって思ったら、簡単に受けたいなんて言えなかった」
みっくん………