anjel








「記憶転移しない方法は、ないんですか?」


「心臓移植には、二つの方法があってね。"同所性移植"と"異所性移植"。"同所性移植"は移植希望者であるレシピエントの心臓を摘出してドナーの心臓を移植する方法で、"異所性移植"はレシピエントの心臓を残し、ドナーの心臓は別の場所に移植する方法。」


"同所性移植"と"異所性移植"…。


ようするに、"同所性移植"が心臓を丸ごと取り替える方法で、


"異所性移植"が心臓を二つ繋げる方法ってことだよね…?


「なら、その"異所性移植"なら記憶転移しないんじゃねーの!?」


亮くんがそう言う。


私も、同じことを思った。


だけど、みっくんはまた首を横に振る。


「"異所性移植"は手術死亡率が高いんだ。」


「っ!」


「そんな…」


「…記憶転移するか、定かじゃないんだろ?」


「確かに、しないかもしれない。だけど、もししたらどうする?俺、二度とバンド出来ないかもしれないんだよ…?」


泣きそうな、みっくんを見て、


私もまた、泣きそうになる。


記憶転移するかもしれない方を選ぶか、


手術死亡率が高い方を選ぶか。


なんて、選択肢が狭いんだろう。


なんて、苦しい決断をしなければならないんだろう。


私なら、どうする?


心臓移植、受ける?


歌うことを嫌いになるかもしれない。


手術中に死んでしまうかもしれない。


そんな可能性があるのに、移植を受ける?


…受けたくないって、思う。


思う、けど。


私は……


私は…………!!










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