君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
──今、思えば。
あの時、中断されるくらいで、ちょうどよかったのかもしれない。
でなければ、幸せすぎて、私はどうかなってしまっていただろうから。
「名前で呼んでみてもらえませんか?」
帰るには遅いので、新庄さんは、泊まるだけ泊まってけと言ってくれた。
Tシャツを借りてベッドに上がった時、ふと思いついて言ってみる。
ヘッドボードに背中を預けて煙草を吸っていた新庄さんは、なぜか考えこむように沈黙して。
「それは、難しい」
固い声で、そう言った。
そんなきっぱりと拒絶されるとは思っていなかったので、愕然とする。
まさか、ここまで来ておいて、私はいまだに元部下の域を出ていないんだろうか。
思わず、どうしてですかと詰め寄ると。
「妹が、同じ名前なんだ」
憮然としたような声が、返ってきた。
私は、たぶん目を丸くしていた。
「新庄さん、お兄ちゃんだったんですか」
「そんな可愛い言われかた、したことないけど。まあ、そうだな」
言われてみれば。
先頭に立つ時のためらいのなさとか、あしらいのうまさなどは、確かに兄として育った人のものかもしれない。